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■「恋は光」
監督:小林啓一
出演:神尾楓珠、西野七瀬
2022年製作/111分/日本
配給:ハピネス・ファントム、KADOKAWA
【15歳の娘にお薦めしたいキュートな文科系哲学恋愛映画】
あー、面白かった!
こんなに清々しい気持ちで映画館を後にしたのは久しぶりかもしれません。
もし娘が今15歳だったら、映画館の入った商業ビルの下りエスカレーターを降りながらスマホを取り出し、即LINEでオススメしている作品です。
何故なら私には「恋愛映画」というよりも「女の子の友情物語」「成長物語」に思えたから。
娘には友情物語、成長物語の側面から推したい作品です(やっぱり母親に恋愛映画勧められたくないだろうしね。。)きっと10代、20代の子が友だちと観ても盛り上がる作品です。
そして、我々大人世代も十分に楽しめる。
そんな映画が「恋と光」でした。
”恋する女性が光って視える”特異な体質を持つ大学生西条。恋愛とは無縁の学生生活を送っていた。ある日、「恋というものを知りたい」と言う文学少女・東雲(しののめ)と出会い一目ぼれした西条は”恋の定義”を語り合う交換日記を始める事に。
そんな2人の様子は、西条にずっと片思いをしている幼馴染の北代をざわつかせる。
さらに他人の恋人を略奪してばかりの宿木も加わって、奇妙な四角関係になっていきー。
予告を観た時からチェックしていた作品でしたが、観る前はいわゆるキラキラ映画なのかしら?と思っていました。
ちなみに私が思うキラキラ映画とは、主演の男性俳優が格好良く映る事のみに特化させた二次元的世界観を持つ作品で、
恋に恋する女の子目線を表現するためなのか、徹底して生々しさを廃したのっぺりとした画面作りが特徴です。
、、、悪口?
いやいや、そんなことはありません。
最近はキラキラ映画と見せかけて実は、、、という作品が邦画には沢山あって、私が注目しているジャンルの一つでもあるんですよ。
この映画も私が今書いたようなキラキラ映画ではありませんでした。
それこそ恋する女の子が「キラキラ」光って見えるという限りなくファンタジーな内容なのに、恋愛映画でありながらポジティブな成長物語。何とも不思議な作品です。
もうキラキラ映画では物足りないけど、リアルで痛い恋愛映画はシンドイな、、、でもラブストーリーでエネルギーチャージがしたいんだよね、という正直で妥協のない人。
映画館をうつむき加減で出て、電車に揺られながらひとり映画の世界を反芻する日があっても良いけど、今日は友だちとおしゃべりしたくなるような鑑賞後感が欲しいな、という人。
一生懸命で魅力的な女の子たちを観て、胸の高鳴りを感じたい人。
まだまだ才能ある演者が隠されていることに気づき、若手俳優の層の厚さに驚きたい人。
こんな人にお薦めなのが「恋は光」です。
以下内容に触れるのでご注意を
この映画、私は恋を定義しようと頑張る西条と東雲(しののめ)の物語だと思いました。
東雲は恋を「本能と学習」という言葉で定義し、西条は「恋は光」という言葉で定義する。
この定義自体はなる程ねと思うのだけれど、私は定義そのものではなく、この2人の言葉に対する真っすぐで誠実な態度にすっかり魅了されてしまいました。
特に東雲というキャラクターが最高です。
彼女は自分の生き方をしっかりと持っているだけに、周りからは浮いていて生きづらそうに見えます。
ところが物語と共に東雲の一喜一憂を見守っていると、私はいつの間にか彼女が好きになっている事に気が付きました。そして、彼女は決して生きづらいと感じているわけでは無い。
むしろ伸び伸びと、毎日を自分らしく丁寧に暮らしています。
そんな東雲と西条はとても似合っているんです。
長年西条に片思いをしてきた北代も、そのことに気づいている。それと同時に北代は東雲の事も好ましく感じていくのです。
恋と友情。
東雲が言うように、恋や愛が絡むと殺人にまで発展してしまうのが人間関係の難解さですよね。
嫉妬、羨望、復讐、裏切り、、、ドロドロした感情が噴き出す原因にもなるのが恋愛ですが、この映画は絶妙なバランスを保ったまま青春映画から逸脱することがありません。
北代、東雲、宿木。
この女の子3人のキャラクター設定として、とても有効に生きているのが西条に対するそれぞれの恋心なんですよね。
そこがとても面白い。3人の女の子に好かれているハーレム状態の西条よりも、北代、東雲、宿木がどんどん魅力的なキャラクターとして立ち現れてきます。
そして、西条への恋心の手の内を明かした3人には確かな友情が芽生えます。
北代と西条の恋がどんな結末を迎えても、この女の子3人の友情は続いていくんだろうな、と思わせてくれる人間関係が素敵です。
この3人で旅なんてしたら珍道中になって面白そう 笑
ちなみに、映画では北代の恋が成就しますが、漫画では東雲の恋が成就するのだとか。
プロデューサーの意向と監督の決定、原作者の承諾があってこの結末に変えた様ですが、それは漫画よりも映画の方が視聴者の年齢層が幅広いからではないか?というのが私の勝手な想像です。
「恋の光が見える青年」という設定を読んだ段階で、なんて苦しい能力なんだろう、、、。と思っていた私は
西城と恋人になるのは、性格的にピッタリくる東雲ではなく「光が見えない」北城であって欲しいと思っていたからです。
恋人の光が可視化されてしまうのはなかなか辛い。
もし西条と東雲が恋人になったら、どうしても彼女の光が失われる日を想像してしまうのです。
歳を重ねると目の前のことだけに集中できなくなってしまうものですね。
だから涙する東雲に胸が苦しくなりながらも、西条と北代が結ばれるラストによって、光が失われる日を予感させない爽やかな鑑賞後感になっていると思いました。
そして、独特な世界観を支える俳優陣も素晴らしかった!
特に東雲を演じた平祐奈さんには今後も注目ですし、元乃木坂46の西野七瀬さんもこんなに素敵な女優さんだとは知りませんでした。
東雲が教室で「うん、うん」とうなずくシーン、北代が美術館前で告白するシーンはもう一度観たいな~!
そして小林啓一監督の次回作にも期待大です。