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前回、幹細胞のコンテンツでは体細胞は幹細胞が常に供給し続けるから、成長因子などで細胞分裂を活性化させることは問題ないという話をしました。
今回は老化ついての僕の妄想です。
理論上、老化が起こるはずはない
前回のコンテンツでお話したように体細胞にはヘイフリック限界があるので、無限の寿命はありませんが、その体細胞を生み出す幹細胞は常に自己複製を行っているので、理論上は尽きることはないはずです。
だから、無限に体細胞は供給される。
つまり、ヒトは老化などするはずがないのです。
しかし、現実にはヒトは歳を重ねると老化します。
なぜ、老化が起こるのか?
当然、気になって調べてみました。しかし、残念ながら、
科学的にハッキリとした原因は特定できていない
という情報にたどり着いてしまいました。
人体は本当に謎が深いです。
人類はまだ人体(生命)について全貌の10%も理解していないと個人的には思っています。
以前どこかで加齢と共に幹細胞の数は減っていくという話をしたと思うのですが、上の通り理論上は幹細胞の数は減らないはずです。
しかし、実際には減っていると考えられています。
現実に誰かを解剖して幹細胞の数を数えたわけではないので推測ですが。
以下は僕が勝手にこうなんじゃないかと思いついた妄想です。
勝手に仮説:幹細胞のがん化
幹細胞は元々、テロメラーゼのお陰で分裂回数に制限がない不死の細胞なので、ちょっと遺伝子に変異が起こっただけでがん細胞になってしまいます。
不死化しているというのはがん細胞の重要な特徴です。
しかも、がんとしての性質はその幹細胞から生まれる全ての体細胞に受け継がれます。
こうなってしまうと、個体として死んでしまうので、そうならないような機構があります。
それがアポトーシスと細胞性免疫です。
アポトーシス:細胞の自殺
プログラム細胞死と呼ばれる機構が全ての細胞には備わっています。
それがアポトーシスです。
どういうことかというと、細胞自身が「もう俺ダメだな」と感じたら自殺するように遺伝子レベルでプログラムされています。
がん化しそうな変異を起こしたがん細胞は個体の生存を脅かすので、自ら死にます。
これが幹細胞の数を減らす原因の一つだと妄想しています。
細胞性免疫:殺し屋のお仕事
免疫細胞の中に「キラーT細胞」といういかにもな名前のヤツがいます。
このキラーT細胞は体中を巡回しながらその名の通りがん細胞を殺してまわります。
実際、ヒトの体では1日あたり約5000個のがん細胞が生まれていると言われていますが、
がん細胞をキラーT細胞が小さいうちに見つけて、日夜殺して回っているから、我々はがんにならずに済んでいます。
しかし、がん化した細胞が幹細胞だった場合は幹細胞の数が減ることになります。
がん幹細胞
最近、がんには正常な幹細胞と同じような性質を持ったがん幹細胞が存在していて、このがん幹細胞が全てのがん細胞を生み出していることが分かっています。
なので現在、がん幹細胞を狙った治療の研究が盛んに行われています。
がん抑制と老化
p53というがん抑制で重要な遺伝子があるのですが、この遺伝子をマウスを遺伝子操作して高発現させると、異常に老化が早く進行することが知られています。
がんを抑制するとなぜ、老化が進行するのかメカニズムは未解明だそうです。
医学部予備校のテキストに「老化のメカニズムについて、p53が関わっている事くらいは科学的に分かっているから出題されるけど、他の事はまだ人類にとって未知だから出題されない」と堂々と書いてありました(笑)
抗酸化:変異の原因は活性酸素
細胞ががん化する原因は遺伝子の変異です。
そして、遺伝子変異の原因の多くは活性酸素です。
実は、酸素は猛毒で地球上に酸素が登場したとき、当時の生物の大半が絶滅したと言われています。
酸素は分子として反応性が非常に高く、酸素に触れているだけで分子は酸化されていきます。
(酸素は光などからのエネルギーを受けると容易に活性酸素になります。)
酸化された生体分子は機能しなくなる上に炎症を起こしたり、処分するのにもエネルギーが必要だったり、と良いことは何もありません。
ちなみに機能しなくなった生体分子が細胞内に溜まってしまった場合も、細胞はアポトーシスを起こします。
しかし、我々は代謝に酸素が必須なので、酸素がないと生きていけません。
活性酸素の発生は生きていく上で仕方がないことなので
- 活性酸素の発生をできるだけ抑える
- 発生した活性酸素を除去する
この2つが重要になると思っています。
老化のメカニズム(多分)
僕の妄想では
活性酸素⇒変異⇒幹細胞死⇒老化
という連鎖によって老化が起こっていると考えられます。
ということで、長々と書いて来ましたが、元凶の活性酸素を除去することが一番大事という事になります。
アンチエイジング(抗老化)≒抗酸化
と言っても過言ではないかもしれません。
表皮幹細胞は減少している
皮膚の細胞を供給している表皮幹細胞は体の表面付近にいるため、観察しやすく、
加齢と共に減少している
ことが確認されています。
Age-related decrease in CD271(+) cells in human skin
理論上は減るはずがないのに、現実には減っている。
これがなぜなのかは、まだ良くわかっていない生物学の謎です。
上の論文では「表皮幹細胞は紫外線によってダメージを受けて死ぬから、数が減る」のではないかと仮説を立てていました。
僕もこの仮説は正しいと思うので、紫外線対策は念入りにやった方が良いと思います。
余談:自然変異
DNAは細胞分裂の度に複製されていますが、活性酸素の影響がなくても自然に10億分の1くらいの確率で変異を起こします。
幹細胞はあまり分裂をしないとはいえ、前駆細胞を供給するために時々は分裂しないといけません。
時々の分裂であっても、繰り返せば繰り返すほど、変異が起こる確率は高まります。
そのため、高齢になるほど発がんの確率が高くなります。
活性酸素の発生を抑えることで、発がんのリスクを下げることはできます。
が、自然変異のリスクは常にあるので、ゼロにすることはできません。
単細胞生物であれば分裂した細胞が変異しておかしなことになっていても、それは別の個体なので「はいさようなら」で終わりなのですが、
多細胞生物は全ての細胞が運命共同体なので、がん細胞のような変なヤツが出てきても簡単には「さようなら」できないので、変異が問題になるわけです。
多細胞生物は常にがんのリスクを抱えて生きていくしかない生物です。