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世間一般には「人工のものは危険で、天然のものが安全」という風に思われているようです。
しかし、これは明確に誤りです。
天然だろうが人工だろうが、危険なものは危険ですし、安全なものは安全です。
笹の葉寿司の危険性?
例えば、笹の葉寿司を考えてみるとわかりやすいでしょう。
これは古くからある日本の伝統料理ですが、なぜ笹の葉に包んでるんでしょうか?
もちろん、見た目に美しいというのもあると思いますが、それなら別の葉っぱでも良いはずです。
なぜ、別の植物の葉っぱではダメなのか?
笹の葉を使うのには、実は非常に実用的な理由があります。
笹の葉に包むと、寿司が腐りにくく、長持ちするんです。
これは笹の葉に安息香酸という抗菌作用のある物質が含まれているからです。
昔の人はこの安息香酸のことは知らなかったはずですが、経験的に笹の葉に包むと食べ物が腐りにくいということがわかっていたんでしょうね。
さて、この安息香酸ですが、現在では化学的に合成されて、防腐剤として使われています。
おそらく、最もよく使われている保存料の一つだと思います。
ですが、「笹の葉寿司には安息香酸が含まれているから危険だ!」みたいな話をする人には会った事がありません。
安息香酸というと、いかにも危険そうな雰囲気を感じるかもしれませんが、昔から利用されてきた自然界に存在する物質なんですね。
こう言うと、
「いや、笹の葉の安息香酸は自然が作り出したものだから安全で、人工的に合成された安息香酸は石油が原料だから危険なんだ」
みたな話を始める人がごく希にいるんですが、これは科学的には全くナンセンスです。
世の中に存在する物質はすべて、原子からできています。
で、この原子が幾つか組み合わさったものが分子です。
この分子の構造(原子の組み合わせ方)が同じであれば、物質の性質は必ず同じになります。
天然の笹の葉に含まれる安息香酸も、石油から合成された安息香酸も、分子構造は同じなので、性質は全く同じです。
分子構造が同じである以上、天然のものと人工のものも区別することに意味はありません。
つまり、「天然のものが良いものだ」という主張は科学的には何の根拠もありません。
まだ未知の何かがあって、合成化合物と天然化合物が違うということが遠い未来に分かる可能性はゼロではないですが、今のところその可能性は限りなくゼロに近いです。
余談 南の国のお弁当
日本だと笹の葉寿司ですが、バナナの葉っぱにも安息香酸が含まれているので、東南アジアではお弁当はバナナの葉っぱにくるまれています。
天然の方がむしろ危険!?
更に言うなら、「天然のものが良い」という考え方には危険性さえあります。
なぜかというと、天然のものにも危険なものはたくさんあるからです。
一番わかり易いのは、天然毒でしょう。
中でも毎年のように死者を出しているのが、フグ毒と毒キノコです。
フグの毒にしても、キノコの毒にしても100%天然のものですが、人を死に至らしめるほどの猛毒です。
まぁ、フグやキノコの毒は極端な例だと思われるかもしれませんが、もっと身近な天然毒もあって、それがマイコトキシンです。
マイコトキシンというと聞いたことがないかもしれませんが、これはカビが生産する毒の総称です。
マイコトキシンには非常に強力な発がん性あることがわかっていて、ものによってはわずか数μgの摂取を続けただけでガンを引き起こします。(1μg=0.000001g)
もちろん、このマイコトキシンは100%天然です。
加えて、細菌汚染も問題です。
細菌は自然に存在する生物ですが、こいつらが繁殖した(つまり腐った)食品を食べれば、食中毒を起こします。
特に大腸菌O157などは有名ですよね。
ちなみにO157が作り出すベロ毒素は青酸カリの1万倍の毒性があります。
(青酸カリの1万分の1の量で人を死に至らしめるということです)
くどいようですが、このベロ毒素も100%天然です。
保存料がカビや腐敗から守ってくれる
「そんなカビたり腐ったりしてたら、食べないですよ」と思うかもしれません。
僕も明らかに腐ってたら食べずに捨てます。
おそらく、多くの人がそうでしょう。
しかし、それにも関わらず、毎年2万人くらいが食中毒になっています。
食中毒になった人たちが、みんな食品が腐っているとわかっていて食べているはずはないですよね?
つまり、食中毒になった人は、ほとんどが食品が腐敗していると知らずに食べているということです。
食品の腐敗が始まった直後は、はっきり味や匂い、見た目に変化があるわけではありません。
それでも細菌は増殖しています。
明らかに腐っているものを口にする人はいませんが、わからないくらいの腐敗だと食べてしまうことがあるわけです。
カビも同じで見た目にカビが生えていなくても、既にカビが繁殖し始めていてマイコトキシンを生産していることがあります。
こういった、目に見えない腐敗やカビによる食中毒から我々を守ってくれているのが保存料(防腐剤)です。
防腐剤を添加しておくことで、見えないレベルでの細菌の増殖やカビの発生を抑えることができるわけですね。
もちろん、防腐剤のような保存料を長期的に摂取した場合の人体への影響は十分に研究されているとはいえません。
しかし、少なくとも今のところ(常識的な摂取量であれば)人体に影響を与えるという報告はありません。
(というか、人体に影響を与えないということが確かめられているから、保存料として許可されています)
逆に、カビ毒(マイコトキシン)には現時点で強力な発がん性があることがわかっています。
食中毒に人を死に至らしめるほどの危険があることは言うまでもありません。
それでも防腐剤無添加の方が安全だと思いますか?
どちらを避けるべきだと考えるかは各々の価値観によると思いますが、少なくとも僕は適切な保存料の使用によってマイコトキシンを避けるべきだと思っています。
保存料が危険だとする論文は非現実的
保存料の危険性をデータとして出している論文は確かに存在します。
しかし、こういう論文は、常識的に考えてありえないような量の添加物を与えて「ほら病気になったじゃないですか?」と言っている事がほとんどなんですよね。
ビタミンCでもアホみたな量を摂ったら死ぬんですよ、というのはこちらで解説したとおりです。
例えば、
コンビニのおにぎりに食品添加物としてよく使われるグリシンというアミノ酸がありまして、一時期このグリシンが子供の成長障害につながるとして騒がれたことがありました。
(ちなみにこのグリシンには保水作用があるので、ご飯がふっくらした状態をキープできます。)
確かにその根拠として、 「グリシンを毎日150g、3ヶ月連続で摂取すると子供が成長障害を起こす危険性がある」とした論文があったんですが・・・。
ちょっと考えれば、こんなことは現実に起こらないということがすぐにわかります。
まず、食品添加物として使われるグリシンはごく少量で、せいぜい数十mgです。
これでグリシンを1日で150gも摂取しようとしたら、一体何個のおにぎりを食べないといけないのか?
絶対に食べれない量になることは、計算しなくてもわかるでしょう(笑)
1日に数トンのおにぎりを食べないといけないことになってしまいます。
しかも、その量を3ヶ月間連続って(^_^;)
ギャル曽根でも無理でしょう。
繰り返しになりますが、その物質が毒になるかどうかは量によります。
そして、どんなに安全性が高い物質でも、アホみたいな量を摂取すればたいてい毒性が出ます。
ちょっと考えれば、馬鹿馬鹿しいようなデータを使って、食品添加物の危険性を煽っているケースはよくあるので注意が必要です。
ちなみにこのグリシン、最近は寝付きを良くする効果があるとかで、サプリとしても使われています。
(グリシンはアミノ酸の一種で人間の体内にも大量に存在します)
同じ成分なのに、食品添加物として嫌われる一方で、サプリとして喜んで摂っている人もいる、という不思議な状況があったりします・・・。
まとめ
どうも、食品添加物の話になると、僕がヒートアップしてしまって、ついつい長くなってしまっているようです。
しかし、世間では何の科学的根拠もないデマがまかり通っているのが、この食品添加物の分野なので。
むしろ悪い人は科学的な雰囲気で人を騙しているのは上に書いた通りです。
ぜひぜひ、保存料の真実を知らなかったという方は認識を改めてもらえればと思います。
今回のポイントをまとめると、
・「天然は安全で人工は危険」というのは誤り
・適切な食品添加物の使用によって食中毒を防ぐべき
・「食品添加物が危険」という話は「量」に注意して聞く
という感じです。