「ゲド戦記」自分とは何か?

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ゲド(大賢人)を苦しめた「影」は、普段は意識されずにある負の部分(末那識/潜在意識)であり、私たちの内にあって、私たちをそそのかして悪を行わせる本能的で残酷で反道徳的なもの(野獣性)。人は誰も「自我」に目覚め、己の内なる深淵をのぞき込むと、負の部分である「影」と戦い始めます。否定しようにも否定し得ない「自分の影」の存在を認め、それから目を背けるのではなく、しかと目を見開いて、その「影」と向き合う戦いです。さらにその影を己の中に取り込み、光の部分だけでなく、影の部分にも、良き発露の道を与えてやろうとする戦いです。困難な戦いですが、それを戦い抜いて初めて、私たちの内なる均衡は保たれ全き人間になる事ができます。「自分」とは何か? 意識の裏返し「二重構造」(自我と末那識・阿頼耶識)。幻(自我)を「幻」と認識出来れば幻から解放されます。「ゲド戦記」著者のル・グウィンは、アースシーという架空の世界を舞台に「ゲド戦記」を綴る。読むうちに、ここに描かれているのは、架空の世界どころか、今まさに私たちが生きて暮らしているこの世界であり、「ゲド」(大賢人)は、私たち自身ではないかと、訳者の清水真砂子氏は後記で述べています。


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