【QA】上清液投与方法の違いと効果ー幹細胞治療の種類ー

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Q. 上清液の投与方法

体に入れる方法として、点滴や点眼、点鼻などありますが、それぞれ効果に違いがありますか?

幹細胞治療の種類

答えるには幹細胞治療の全体像から説明しないといけないので、幹細胞治療について解説します。

まず、幹細胞治療について大まかに分けると、「自分の体から取り出した幹細胞を増やした上で体に戻す自家移植」と「ヒト幹細胞を培養した際に出てくるヒト幹細胞培養上清液を投与する方法」との二種類があります。

1.自家移植

一般に幹細胞治療というとこちらの自家移植を指します。

多くの場合、自分の脂肪組織から間葉系幹細胞を取ってきて、培養で数を増やした上で、体に戻す治療になります

投与方法には静脈注射と局所注射があります。

①静脈注射(点滴)

これは僕が行った方法です。

静脈に点滴で培養した幹細胞を入れることで投与します。

幹細胞は血流に乗って全身を回り、損傷している組織を再生させると同時に成長因子などを分泌し、周囲の細胞も活性化して回復させます。

②局部注射

こちらはピンポイントで幹細胞を注入する治療です。

例えば

関節軟骨がすり減って痛みが出ている患者の関節に直接幹細胞を注射する

乳房に注射することで、乳房の脂肪細胞を増やして豊胸する

皮下注射で幹細胞の数を増やすことで肌のアンチエイジングを行う

などの治療が現在は行われています。

2.上清液投与

幹細胞そのものではなく、培養時に出る上清液を投与する治療法です。

上清液には幹細胞そのものは含まれていないので、他人の幹細胞から作った上清液も使えるのがメリットです。

ただ、成長因子などは非常にセンシティブで失活しやすいので、適切に扱う必要があります。

僕自身が上清液の点鼻をやってた時は、常に冷凍状態の上清液をもらってきて、点鼻する直前に解凍してから調合して使っていました。

①静脈注射(点滴)

静脈に点滴で上清液を入れることで投与します。

幹細胞そのものを投与するのと違い上清液(成長因子など)は正常な組織(細胞)にも消費されてしまうので、損傷した箇所をピンポイントで回復させることはできません。

回転寿司のようにレーンの先にいる人(細胞)が寿司を取ってしまうと、後ろの方まで寿司(上清液)が流れてこなくなってしまいます。このため後ろの人が腹をすかせていても寿司は食べれなくなってしまうのと同じです。

最近の回転寿司は注文すれば新幹線が届けてくれるようになったので、座った場所が悪くてイカとタコしか流れて来ないなんてことはなくなりましたが。

その点、幹細胞そのものは損傷した部位に集まる習性があるので、この回転寿司現象は起こりません。腹を空かせている人(損傷した部位)のところに直行します。


②局部注射

こちらはピンポイントで上清液を注入する治療です。

上清液は上で解説したように、すぐに消費されてしまうので狙ったところに効かせるのが難しいです。

それを解決するのが局部注射です。

これならば、他の部位で消費される事はありません。

例えば、幹細胞を直接注射するのと同様に

関節軟骨がすり減って痛みが出ている患者の関節に直接上清液を注射する

皮下注射で上清液を注入することで肌のアンチエイジングを行う

などの治療が現在は行われています。

③点鼻

鼻腔粘膜から上清液を吸収させる方法です。

鼻腔粘膜から吸収された物質は直接、脳に届きます。

僕のように脳を損傷している場合や、認知症の治療などに用いられます。

余談ですが、覚醒剤を使う時に鼻から直接、粉を吸っているシーンを見た事があると思います。

アレは鼻腔粘膜からの方が静脈注射よりも早く高濃度で脳に到達するからです。

④塗布

上清液を直接肌に塗る方法です。

アトピーの治療などで行われているそうなのですが、ご存知の通り、成長因子は分子量が大きいため、肌バリアを透過できません。

エクソソームはリポソームは通過できますが、成長因子を丸々無駄にしているので、もったいない使い方だなと思います。

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