庶民のための「危機管理入門」-明石散人

|

庶民のための「危機管理入門」-明石散人

小説現代


平成九年七月号初出



前略


昨今はやりの危機管理という問題である。


日本にはこれが缺落していると大合唱されるが、

これ壹見辻褄が合っているようでいて、

實は非常に危ないことに直結している。


危機管理というのは、隠蔽工作に接續しているからだ。


利益誘導、自己(機關)保身、ばれないようにする。


まずいことは發表しない。これが本來の危機管理の姿なのだ。


 大概の人は危機管理と聞くと言葉の響きに客観性を感じ、

これが良いことの象徴のように錯覺してしまう。


中略


今の世の中で、危機管理能力が最も優れているのは誰か。


これは簡單である。決して官憲の縛につかない政治家と検察官だ。


中略


全てより遙かにたちが惡くて極惡人だ。


ただ彼らは危機管理能力にたけている。だから捕まらない。



我々庶民はとかく捕まる人間を惡と視がちだが、

この全てが惡とは限らない。


捕まえ裁く側の方が往々にして惡である。


これを充分に承知しておくべきなのだ。


彼らが人を捕まえるのは、

自己保軆を前提にした意圖的な排除であり、

それが彼らの危機管理に直結しているからだ。


權力者が何か物を言うとき、そこには必ず意圖的な誘導がある。


こんな權力者に、

我々庶民はいつも自己の危機管理能力が不足し騙されっぱなしだ。



それでは我々庶民の危機管理とは何がポイントなのか


中略


『理由の如何に關わらず、とりあえず何でも反對し、拒否すること』

これが我々庶民の危機管理である。


我々庶民は決して利益配分に與ることがないからだ。


中略


決して頷いてはいけない。とにかく反對することだ。


彼らの話を聞く必要など全くない。


彼らが我々から吸い上げる税の類は全て

彼らの危機管理の枠組みの中にあるからだ。


中略


我々庶民はこれをもう確定したものだと諦めているが、

これも大きな誤りである。今からでも遅くはない。


たった今から『やっぱり反對、斷固として認められない』と、

聲高に主張すべきなのだ。


中略


權力者に對して何でも反對、何でもごねる、何も言うことを聞かない、庶民に公表された情報は全て

權力者の意圖的なスキームと認識する、

勝手に枠組みから逸脱する、これが庶民の危機管理なのだ。



庶民の分際にも拘わらず、いかにも判ったような顔をする、

これがどれほど愚かなことか確と肝に銘じなければならない。


中略


權力者はなぜ權力者であり得るのか。


それは權力者が庶民を恐れないからである。


中略


權力者が庶民に恐れを抱かなくなった時・・・。


もうその國の終焉は近い。


今の日本は加速度的に終焉に向かっている。


誰かがこれを止めなければいけない。


止めるのは、無論庶民である。


これが庶民の義務なのだ。


後略


アカシックファイル 未来の記憶 クロニクル』所収

あとがきより引用

コメント0
お気に入りに追加しました お気に入りから削除しました