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受験勉強の復習も兼ねたコンテンツですが、最新の再生医療に興味のある方はぜひ読んでみてください。
実はもう既に幹細胞から複雑な臓器(心臓、膵臓など)を作るところまではできています。
3Dプリンターで心臓を形作るみたいなお手軽な方法ではなく、まだ形を作れるようになったというだけで、解決しないといけない問題があって実用化までの道のりは遠そうですが
ブタさん
細胞を培養するだけなら、シャーレでできるんですが、残念ながら、その細胞を人工的に複雑な臓器の形にすることは現在の技術ではできません。
ではどうするのかというと他の動物に作ってもらいます。
心臓の作成の場合、遺伝子操作した豚の受精卵にiPS細胞を注入して、豚さんに心臓を作ってもらうというものです。
「なぜこれで人間のiPS細胞由来の心臓ができるのか?」
というのが以前編入試験の問題で出題されたらしいので、この前勉強しました。
iPS細胞には全能性がないので、胎盤になることができません。
なので、受精卵からできる胎盤はブタ由来のものになります。
胎盤さえできてしまえば、人間の細胞が入っていても拒絶反応は起きません。
(ヒトでも胎児は胎盤を介して、母体と接しているので胎児
そのお陰で、豚の胎児は人間の細胞が混じっていても正常に発生するわけです。
ある意味、全能性を持たないというiPS細胞の欠点がうまく働いたということです。
豚さんの子供はできたとして、なぜ心臓が人間のものになるのか?ということなんですが。
ブタさんの受精卵には遺伝子操作で心臓を形成する能力を失わせておくと、心臓になれるのは、ヒトiPS細胞由来の細胞だけになるので、
大問題
最大の問題はどうしても心臓の細胞にブタ由来の細胞が混じってしまうことです。
これは解決できないと移植したあとに拒絶反応が起こるので、実用化はできません。
もう一つ大問題がありまして
この方法だととてつもないコストと時間がかかるということです。
- まずはiPS細胞の作成。
- ブタの受精卵に遺伝子操作。
- ブタの妊娠出産。
- 生まれた子ブタが成長して、人間に移植できるサイズになるまでの飼育。
と移植できるようになるまでに
文字で書いただけでも面倒くさくなるくらいの手間がかかります。
またもし重篤な心臓病の患者さんの場合、ブタさんが育つ前に亡くなってしまう可能性もあります。
当然、その患者さんから作成したiPS細胞でないといけないので、他の患者さんに使うことはできません。
つまり、それまでにかけたコストは全部パーになるということです。
などなど、まだ解決しないといけない問題は山積みです。
P.S. 日本の財政破綻は必至
本庶先生のノーベル賞受賞で注目された免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(ニボルマブ)の薬価は年間で約1000万円で、3割負担でも年間300万という恐ろしく高価な薬です。
このiPS細胞から作成した臓器の移植治療が実用されたとしたら、おそらく億単位の治療費になると思われます。
ニボルマブを作る時は、シャーレの上で不死化操作をした免疫細胞に抗体を作らせるだけですが、このiPS心臓はその10倍以上手間がかかるので。
仮に治療費が1億だとすると、自己負担額が3000万、公費負担が7000万。
こんな治療をバンバンやってたら、日本は余裕で財政破綻します。
国民皆保険制度はこんな高額な医療が将来出てくることを想定していなかったので財源が足りなくなるのは当たり前だのクラッカーなんですが。
何かしらのブレイクスルーが来ないと実用化は難しいでしょう。
ニボルマブの作り方についても一通り勉強しましたが、抗体を作らせる”だけ”といってもかなりの手間はかかります。
P.S. iPS細胞は「万能細胞」ではなく「多能性幹細胞」
iPS細胞はよく「万能細胞」と呼ばれますが、この呼び方はマスコミが勝手に言ってるだけで生物学用語ではありません。
そして、全能性がある細胞は哺乳類の場合、受精卵だけです。
iPS細胞は胎盤にはなれないので”万能”ではありません。
ですが、胎盤以外の全ての細胞にはなれるので「多能性幹細胞」と呼ばれています。
試験の答案に万能細胞と書いたら、✕です。
正しくは「全能性細胞」です。
これも幹細胞の授業で習うまで知らず、これまでブログでは普通に万能細胞と書いていました。
テストの答案じゃないから、別に問題はないんですが。。。
今回はちゃんと全能性と表記してます。
学士編入試験の生命科学のレベルがここまで専門的だというのは想定外でした。
編入学は一般入試と違って文科省の学習指導要領に従う必要がないので、教授陣が自分が研究しているテーマから出題する傾向があるようです。
編入試験では学科は7割で合格ラインと言われているのは、おそらく試験自体が難しいからでしょう。
僕は高校生物に毛が生えた程度だと思って余裕ぶっこいてたんですが、全然レベルが違いました。
でも、やるしかありません。