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この本、一人の女性の運命を変えました
Twitterでちょっと旋風を起こした「あっきゃん」です。
彼女のことは、以前、番外編ということで書きました。
彼女は普通の作文嫌いの女性でしたが、この本と
出合って運命が変わったと言うのです。
どうしても気になっていたので、やっと購入して
読んでみました。著者は、朝日新聞の論説委員で
九州の山奥の支局長(当時)か何かしている人です。
山奥ですから、狩猟もするそうです。なので、
ライターであり猟師でもあるわけです。
ライティングの私塾も開いているようで、若い記者や、
ライター志望の学生などが集まって来てるとか。結構、
厳しく教えているのかもしれません。泣いてしまう
女子学生もいるとかです。やっぱり、ライティングには
若い人たちが思っているものと違うものがあるんですね。
それを教えるには厳しくしないと。。
さて、著者の主張です。
「三行で撃つ」とは猟師にもライターにも言えること。
意味は、三行以内に撃って、読者を驚かせ、のけぞらせないと
ダメだといいます。そうでないと、獲物も読者も逃げて
しまう。さらにロシアの文豪を引き合いにだし、
「物語の中に銃が出てきた以上、それは発射されないと
いけない」といいます。
最初だけ強烈な印象を狙って書いて、それっきりという
ライターもいますが、それはダメ。この著者もロシアの文豪も
×を付けます。そんなんじゃあ、中だるみになるのが関の山です。
読者は欠伸をして涙目になります。ライターはもっと考えな
さいということですね。
ライティングの初中級者向け
上手い文章について説きます。いい文章とは人をいい気持に
させる文章とか、世の中をほんの少しでもいいものにする文章、
などといいます。この著者、ほかにもいろいろ書いていますが、
ここで全部書く気が起こりませんから2つだけにしました。
なお、「など」や「いろいろ」と書くな、ともいってます。
「など」というのは責任逃れのためで言い訳だ、というんです。
グサッ、ときました。私は「など」「いろいろ」を多用します。
私はいい切りません。責任取りませんから。
映画の出だしは参考になると。いい映画は、出だしに誰のために、
何のためにかを雄弁に語りつくします。映画については、
もう少し後に、トーキー映画の俳優について語っています。
セリフもCGもなかった時代で、俳優はつつましやかに笑うや
尊厳に対する心の底の底に横たわっている微笑み、
人間の暗部にある世界への嘲笑を、表現できたというんです。
かもしれません。でも、この部分を読んで、時代の進歩も
受け入れて欲しいと思いましたね。受け入れていないから
女の子を泣かすんだと思いました。
「としたもんだ表現」は親の仇でござります
少々辛口です。「としたもんだ表現」とは常套句の意味です。
「澄み渡った雲ひとつない抜けるような青空」みたいな。
常套句が何故良くないかというと、読者の思考が止まり、
観察しなくなるからだそうです。確かに、常套句使うときは、
読者に突っ込まれたくないときです。当たってます。
でも、それは読者にさらに読み進んでもらううえで
マイナスといいます。そうであれば、常套句は控え
ないといけないですね。
また、擬音語、擬態語、流行語を多用禁物といいます。
擬音語も常套句の一種で、これを使うと書き手は世界を
観察するのをやめてしまう、からだと。私も以前、
あるコピーライターが使った「ドックン」というのを試しに
使ったことがあります。書いたあと、この擬音語が妙に
気になり、読み手がシラ~と引いているような感覚に
なりました。この経験から、著者のいうように多用禁物には
賛成です。意見が一致しました^^;
「起承転結」について面白い見解
殆んどのライターは、「起承」の部分までしか書かない。
本当に重要なのは「転」の部分だ、というんです。
この「転」が書けるようになると生き残れる。しかし、
「転」を書くのは難しい。意表を突くために古今東西の知識が
必要だし、順張りや逆張りが使えるテクニックが必要だと。
さらに上級者になれば、「脱臼」のテクニックも必要になる。
これは、コピーライティングでいえば、「ズラシ」ですね。
威勢のいいキャッチから、巧みにズラシていっても読者は
気づかないというヤツです。う~ムッ、
上級ライターは侮れないし、油断ならないですね。
共感させる技術
共感させるといっても、これは難しい。共感の押し売りは
マイナスです。サイレントの俳優のようにやらないといけない。
あるいはエピソードを語る。ここで大切なのは、見て、正確に
書くことだそうです。しかも、五感を使えということ。
人は視覚に頼るのは普通ですから、初心者には難しい
でしょう。訓練が必要ですよ。
メール上手は幸せな人生を送る
少々意外ですが、著者はそういってます。
文章操縦力が高い人は成功するとも。世界でもトップにいる人は
メールを上手に書けると、証拠みたいにいってます。
これは、文章というのは本質的に相手を必要とし、
しかも文章は情報力が低いにもかかわらず相手を納得
させないといけないためのようです。
文章の情報量は、会話の情報量よりも少ないんです。
しかも、会話のようにスピード感にも乏しい。
そのため、訓練が必要です。
ライターの道具箱
ライターを志す人は、まず道具箱を持ちなさい。
道具箱は4段になっていて、一番上から語彙、文体、企画、
そしてナラティブが入っている、といいます。
語彙を増やすには読書をして辞書を引けということ。
類語辞典は上級者には必携です。
文体とはスタイルのことで、スタイルのない作家は
惨めだとも言い切ってます。このスタイル修得の練習には、
主語を変えたり、主題を取り替えたり、主義を変えたり、
キャラを変えて見たりするんだそうです。なかなか
地道な努力が必要なようですね。
3番目の企画とは、何を書くかということですが、
独自性を出すのに手っ取り早いのは自分だけの
喜怒哀楽を書くこと。このうち最後の「楽」は難しい。
「楽」は人を喜ばせることだそうですよ。
この喜びとか笑わせるのは、危険とか、緊張、圧迫、
怒りや悲しみから、解放されたその瞬間に出る吐息だ
というんですね。なんだか難しいですができないと
上級ライターに成れません。
「抜き書き」の重要性
ここで、「抜き書き」は死活的に重要といいます。
「抜き書き」というのは、コピーライティング的にいえば
「スワイプファイル」のことです。人の文章を読んでいて
これはと思うものをノートに写し書きするのです。ただ、
この著者のやり方は少し違います。
そのやり方とは、まず本を購入し、読んで素晴らしいと
感じたところには線を引き、その部分があるページを折って
分かるようにします。読み終わって、しばらく置いておく
んです。1カ月くらい。そして再び線を引いたところを読み直す。
それで、変わらず感動を覚えたら「抜き書き」帳に書き写す
といいます。
本に線を引いたりしたら高く売れないと、心配するのは
よしましょう。ライターを志す者は最低1,000冊は持っていないと!
なぜ千冊か?面白い説明をしていました。「知の指数関数法則」と
いうのがあるんだそうです。英単語を例にあげていました。
10の1条は10語。これじゃ英語は全然ダメ。10の2乗は100語です。
2乗による範囲を999語までと見ますから、この2乗のレベルなら
少し英語が分かるようになる。そして10の3乗。
1,000語から9,999語まで。このレベルなら英語も苦も無く
なります。これをライターに当てはめると最低1,000冊と
なるわけです。安い投資だといいますが、1冊1,000円の本を
1,000冊買えば100万円です。これくらいの資金負担は覚悟
しなさいということなんでしょうかね。
4段目のナラティブ
話し言葉の場合、最近感動したりヤバかったこと、話しますよね。
面白く工夫したりして。これを文章にするのがナラティブです。
前に、文章は話し言葉に比べて情報量が多くないといいました。
その分、工夫します。謎を持たせたり、予想を裏切る意外な方向に
行ったり、そしてオチを付ける。こういうやり方をすれば、
ネタ切れなく何回でも繰り返しができるといいます。
また、ナラティブにはスピード感を付ける工夫も必要です。
どうするかというと、長文と短文を組み合わせたり、
適当に主語を省略するというのもあります。あるいは
語尾を少しずる変えるのも日本語らしいナラティブになる、とも。
スピード感のほかにリズム感の工夫も必要です。具体的には、
句読点、いろいろな括弧類、改行や一行開けがあります。
(しまった。いろいろな括弧類と書いてしまった。
「」『』“”()<>のことです。)また、日本人は5音、7音に
区切って読む傾向がありますから、これも利用する
という手があります。
グルーヴ感が大事
「グルーヴ」とか誰も知らないですよね。何でもレコート版の
「溝」のことらしいです。ジャズでもいいのを聞くと
体が勝手に動き出す。音楽は運動だ、とも。同様に文章も
5感を総動員した比喩表現にしなさいといいます。なので、
形容詞など使うな、とも。私塾の塾生には形容詞を使わないで
書くように指導しているそうです。そして、読者を少し前に動かせる。
なかなかの秘訣に聞こえます。コピーライティングでも、
「3つのNOT」があって、最後は「行動しない」です。この
「3つのNOT」を打ち破るのがコピーライティングですから、
なんかこれ文章全般の共通使命みたいです。
書く習慣
ライターを目指すなら、書く習慣を付けなさい。
決まった時間、決まった場所で書くようにしなさいといいます。
たとえ1行も書けなくとも机に向かって書くふりをしなさい、
とまでいいます。そのような習慣ができて初めて創作の女神も
降りてきてくれるそうです。
女神が下りてくる前に、内なる悪魔が騒ぎ出すといいます。
・私は作家じゃない。
・私はただの記者だ。会社員だ。主婦だ。
・私の書くものに何の価値もない。
・私よりも○○の方が優れている。
・私は、だめだ。
のようなことが頭を占めるのです。そう悪魔の囁きです。
これって、自己啓発や成功法則のコーチングやカウンセリングでも
同様なことをいいますね。人間心理の共通事項かもしれません。
とにかく、ライターでもなんでも、内なる悪魔に負けてはならない
ということです。最後にこの著者がいうには、
「言い訳を考えていると、短い人生一瞬で終わる」です。
至極当然です。言い訳無しにしましょう。